Breizh Café s’engage au quotidien pour le développement d’une agriculture biologique, locale et durable. Nous prenons soin de nos ressources et valorisons la vie agricole bretonne, de la terre à l’assiette.
bertrand larcher
フランスの北西部、ブルターニュ地方では、カフェの数より多いクレープリー(クレープ料理店)で食事をしながら地元の発泡酒シードルを飲み、親しい人たちとのおしゃべりを楽しみます。
このソバ粉で作るクレープ「ガレット」。中には卵やハム、きのこやベーコンなどの具が入り、仕上げに塗られる塩入りバターが香ばしいものです。
「ソバ」というと日本独特の作物、というイメージがありますが、中国雲南地方原産でアジアをはじめヨーロッパやアメリカ大陸でも栽培されているグローバルな作物です。中世十字軍によってフランスに運ばれ、ブルターニュのアンヌ女公がソバ栽培を無税として奨励したため、この地方で盛んに作付されるようになりました。成長の速い植物で3か月ほどで収穫できるため、飢饉の度に救荒作物としてブルトンを救ったそうです。
ブルターニュではソバ生地を布でくるみ、野菜や肉のスープで煮るような料理(キガファース)が作られていましたが、ある時焼石の上に落ちた生地が薄く焼けていて、とても香ばしく美味しい食べ物であることが発見されます。
以降ガレットが主食の時代が数世紀続きますが、デザ-トとしてのクレープができたのは後のことで、「ガレット=そばの生地=塩味」、「クレープ=小麦の生地=甘味」と一般的に使い分けられています。暖炉で焼くガレット用鉄板、生地をのばして広げるラトー、生地を裏返し折りたたむスパチュールが家庭で使われていましたが、今ではパン屋、食料品店で購入する人が多くなっています。
小麦粉のデザートクレープの中でも秀逸の一品は、当店が日本に紹介してきた「塩バターキャラメルのクレープ(キャラメルブールサレ)」。ゲランドで有名な海塩や、酪農が盛んで有塩バターの産地であるブルターニュでは、塩バターキャラメル(キャラメルブールサレ)や塩バタービスケットのような塩味スイーツが多く作られました。陸の幸「バター」と海塩を生かした塩味菓子は、自然との調和を大切にするブルトンの伝統の賜物です。
このようにフランスの伝統料理でありながら、気軽に楽しめる郷土料理「ガレット」は、前菜、デザートのクレープ等と合わせてフルコースになる大切な食事です。りんごの低発泡酒(シードル)や食前酒にシードルカクテル、食後にはりんごの蒸留酒やそのお湯割りで締めるのがブルターニュ流。かしこまったフランス料理というイメージから離れて、ブルターニュ流の食文化を是非お楽しみ下さい。
ソバはタンパク質が10%近く含まれ、必須アミノ酸リジンを最も多く含む穀物で、栄養価の高い食物です。成分には以下のような特長があり、日本でも何世紀もの間「ソバは妙薬」であると言われ続けてきました。
【ルチンをはじめとするポリフェノール類】
そばの成分である「ルチン」は、ポリフェノールの一種で、毛細血管の膜に弾力性と厚みを持たせる働きがあります。欧米では血管強化剤として認可されているほどで、穀物の中では唯一そばにしか含まれない栄養素です。抗酸化作用、また血圧降下作用も認められています。
このルチンはビタミンCと一緒に摂取すると、吸収が促進されます。ブルターニュ流にビタミンCたっぷりのシードルを飲みながらソバ粉のガレットを食べることは、優れた食べ合わせであることが科学的に証明されています。
またルチン、ビタミンB1・B2など水溶性の栄養素は、調理法によっては失われてしまいますが、ガレットはそばの全成分が余すことなく食べられる、理想的な食べ方です。
【ビタミンB1、B2】
疲労回復ビタミンであるビタミンB1、また皮膚や粘膜を保護し、肌・爪・髪の発育や体全体の抵抗力を強め、成長を助けるビタミンB2。ソバにはこれらのビタミンが、小麦粉の2倍、白米の5倍も含まれています。
【食物繊維】
食物繊維が5%も含まれるソバには、便秘や毒性抑制、体内コレステロール量の増加抑制の効果があるとされています。
【ミネラル類】
大豆の2倍もの鉄分をはじめ、カリウム、マグネシウムは小麦、米の3倍以上含まれ、身体の調子を整えます。
レンヌONIC(国立インターシリアル局)の調べによると、19世紀末にはフランスでも60万haの耕地でソバが栽培されていましたが、21世紀に入るとそれが約22000ha、生産量は約58000トンに激減します。フランスの食生活がいかに変化してきたか分かりますが、今日のフランスでソバ生産の80%をブルターニュ地方が占めるように、この地方ではソバを大切に作り続け、昔ながらの食文化を保とうとしています。ソバは栄養価が高く、農薬不要でわずかな肥料で輪作可能なため、今の時代、その価値を再認識されるべき作物です。
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